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「やさしい日本語」で外国人患者さまや医療通訳の皆さま、病院の言葉が難しいと感じている方々と繋がっていきたいと考えている元看護師です。これから勉強するので、ぜひ皆様ご指導をお願いします。

by みっこ

「やさしい日本語」に出会うまで(1)解らなかった病院の言葉


今、私は「やさしい日本語」を勉強しようと燃えています。

どうして、そんなに熱くなってしまったかということを
これから数回に分けて、綴っていこうと思います。

私は今48歳です。看護師になったのは32歳の時でした。

24歳の時、当時2歳だった娘が脳外科の手術をしなければいけない病気になりました。

主治医の先生が、いろいろ説明してくださいました。
手術の危険性もたくさん話してくださいました。
でも、正直「手術をしなければ治らない」ということしか解りませんでした。
そして、手術の同意書にサインをするときが、やってきました。

「手術の過程でいかなることが起きても、異議申し立てはいたしません。」
というような文章が最後に書いてありました。
本当は、意味が解っていないのに。。。
「手術をしなければ治らない」というのだから。。。
納得しているわけではないけど、サインするしかない。。。
後、私ができるのは祈ることだけ。。。
胸のつぶれるような思いでサインしました。

幸い、手術は成功しました。
それなのに、私は大きな過ちを犯してしまったのです。

手術が終わって、病棟のベッドに娘を寝かすと、看護師さんが
「医師の許可が下りるまで『絶対安静』ですからね。」
「何かあったら、ナースコールを押してくださいね。」
と言って、部屋から出ていきました。

しばらくして目が覚めた娘は、
「おトイレに行きたい」と言いました。
「おしっこなら管で出てるから、大丈夫。オムツもしてるから心配しないで。」
と私が言うと、
「もう、お姉ちゃんだもん。オムツではしない。おトイレに行く。」
と泣くのです。
何度も説得しましたが、娘がだんだん
「もれちゃうよぉ。おトイレに行く!」
と半狂乱になったのです。
『絶対安静』と看護師さんは言っていました。

私は、家からオマルを持ってきて、とりあえず娘をそれに座らせれば
なだめられるかと思い、そうしました。
オマルに座った途端、娘は激しく吐きました。
慌てて、抱き上げ、背中をさすりながらナースコールを押しました。

入ってきた看護師さんが叫び声をあげ、娘をベッドに横にして
応援を頼みました。
医師や看護師が沢山駆けつけて、点滴から薬を入れて娘はまた眠らされました。
「『絶対安静』といったじゃないですか。なんで抱き上げたりしたんですか。」
とひどく叱られました。

看護教育を受けてから、『絶対安静』とは、場面場面で違う使い方をすることが
解りました。
でも、その時は「絶対、安静」という意味だとしか思いつかなかったのです。
まさか、「泣こうが暴れようが頭と体を水平に保つこと」とは
思いもよりませんでした。

この後、看護師さんはまた
「何かあったら、ナースコールを押してくださいね。」
と言って出ていきました。

看護師になった今は分かります。
「何かあったら、ナースコールを押してくださいね。」
ある意味、看護師が出ていくときの挨拶のようなフレーズだということ。

でも、その時は自分のせいで、とてつもない事が起きた直後です。
「何かあったら」という所だけで頭がいっぱいになってしまいました。

「トイレに行っている間に何かあったらどうしよう。」
「買い物に行っている間に何かあったらどうしよう。」
「寝ている間に何かあったらどうしよう。」
そんな不安で、寝食を控えて、まんじりともせず娘を見守っているうちに
自分が倒れて、娘の横で点滴を受ける羽目になってしまいました。

言葉の意味を知らないって恐ろしい。
日本語として知っている単語なだけに、自分が誤解しているなんて
思いもしないので、質問すらしませんでした。

看護師さんも、素直に解ったような顔をして「はい」と言った私を
疑うこともなかったでしょう。
そして、思いもよらない展開に、驚かれたことでしょう。
もしかしたら、ヒヤリハットレポートを書かされてしまったかも
しれません。

手術を受ける前よりはるかに改善したとはいうものの、
軽いてんかん発作が残ってしまった娘を、その後も守るためには、
勉強しなければいけないと強く思いました。

手術から2年後、看護大学に進学しました。
娘が体をはって、私に示してくれた使命だと信じています。

幸い、娘は私が大学を卒業する頃には、てんかん発作が
なくなって、薬もどんどん減らし、小学校を卒業する時には
薬を飲まなくてもよくなりました。

今では、そんな娘もお母さんになっています。(私はおばあちゃんに)

こんなことがあって、私は外国人医療と向き合う前に
「わかりやすく、誤解がないように患者さまやご家族さまに説明する」
大切さを自覚して、そしてベテラン看護師になった暁には、
そうしたことを伝えていけるようになりたいと思ったのでした。

長くなりました。
まだまだ「やさしい日本語」に出会うには長い道のりがあります。

続きは次回。

最後までお読みいただきありがとうございました。
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by yasashiinurse | 2017-05-21 13:19 | 「やさしい日本語」に出会うまで